大前研一の「新・国富論」

大前研一の新・国富論

大前研一の新・国富論

 
 勝間和代さんの本が面白かったので、同じくマッキンゼー出身の人が書いたものでも読んでみるか!と思い立ち、買う前に借りようと図書館にいってみたらこの本に出会った。
 日本という国をより良くするために私たちが何をすべきかが300ページほどのこの本に詰まっている。著者の大前研一さんが理科系出身であるからだろうか、この本は結論とロジックがうまくかみ合っている感じがして非常に読みやすかった。
 第四章「民主主義の錯覚」では日本の物価の高さを議題とし、何ゆえ薬は高価なのか?なぜそこかしこにガソリンスタンドがなければならないのか?などの生活に近い部分の問題点と原因を探っている。今の日本は結論をそのまま受け入れているように感じるが、本来、結果が存在するのであれば原因を探り、そこから改善していくべきだ。
 SSは窓拭き業務など止めてセルフにすれば人件費が浮き、結果ガソリン代は安くなる。国が守っている商社の存在がなければガソリン代は尚のこと下がる。など原因を探っていろいろな部分を改善して行こうというのが全体的な流れである。
 ガソリン代だけでなく異常に高い米価格、税金、土地などを取り上げ、よりすみやすい国を作るためになにを考え、どのように行動すべきかの指針を示している。日本という国で過ごしている一国民として考えなければならないことが詰まった本ではないかと思う。荒削りの考察本だけどためになった。
 
 非常に残念なのはこの本が20年前に書かれたものであるという事実。本の中で”中曽根首相”とか”新自由クラブ”とか出てくる。本来ならこの本は古典であるべきものだ。読みながら「そんな時代もあったな〜」と思うのが正しくて、間違っても頷きながら読むものであってはならない…はず。しかしながら一通り目を通した自分の感想は後者に近いものであり、結局20年前から日本はあまり進歩していないという事実だけが目の前にあった。本の中で行政と立法の癒着が取り上げられ、その現状はいまなお続いている。
 最大少数の幸福ではなく最大多数の幸福を実現する社会を目指すには何をすべきか。社会が大きな変遷を迎える前に一人ひとりが考えなくてはならない。